5号館を出て

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 ミッシング・リンク(失われた環)という言葉は、たとえば爬虫類と鳥類をつなぐ始祖鳥が発見された時などに使われる言葉です。

 両生類が魚類から進化してきたことを疑う人はほとんどいないと思いますが、実は両生類と魚類をつなぐような始祖両生類ともいうべき動物(の化石)はいままでのところ発見されておらず、まさにミッシング・リンクだったのですが、最新のNatureの表紙にはその化石の写真が「生き生きと」した様子で載っています。また、同じページには、再現模型と思われる動物が3匹以上並んだ写真も出ています。

 その化石種の名前もかわいらしくティクターリク・ロゼー(Tiktaalik roseae)と名付けられました。

 Natureでは、この発見をよほど評価していると見え、無料のnews@nature.comで記事を公開しているだけではなく、本誌でも例外的に2本のArticleとして掲載しています。もちろん、News and Viewsでも解説しています。

News
Published online: 5 April 2006; | doi:10.1038/news060403-7
The fish that crawled out of the water
A newly found fossil links fish to land-lubbers.
Rex Dalton

News and Views
Nature 440, 747-749 (6 April 2006) | doi:10.1038/440747a
Palaeontology: A firm step from water to land
古生物学:水から陸への確実な一歩
Per Erik Ahlberg and Jennifer A. Clack

Article
Nature 440, 757-763 (6 April 2006) | doi:10.1038/nature04639; Received 11 October 2005; ; Accepted 8 February 2006
A Devonian tetrapod-like fish and the evolution of the tetrapod body plan
四肢動物に似たデボン紀の魚類と四肢動物の体制の進化
Edward B. Daeschler, Neil H. Shubin and Farish A. Jenkins, Jr

Article
Nature 440, 764-771 (6 April 2006) | doi:10.1038/nature04637; Received 11 October 2005; ; Accepted 8 February 2006
The pectoral fin of Tiktaalik roseae and the origin of the tetrapod limb
Tiktaalik roseaeの胸びれと四肢動物の肢の起源
Neil H. Shubin, Edward B. Daeschler and Farish A. Jenkins, Jr

 論文の写真や図を見るだけで、内容はすぐに想像できてしまうので無理に読まなくても良いと思うのですが、なんとありがたいことに非常に詳しい解説がすでに日本語訳としてネットで公開されています。元ネタは National Geographic News ですが、早々に逐語訳が出ていますので、そちらをお読み下さい。
記事 : そして魚は陸上へと向かった[前編]
記事 : そして魚は陸上へと向かった[後編]

 報道が先行することを極端に嫌うはずのNature論文を説明する記事が、どうしてNature本誌の1日前に出たのかとちょっと不思議に思いましたが、実は National Geographic の母体がこの研究のスポンサーになっているんですね。
 米国地理学協会は、このプロジェクトの資金の一部を提供しています。プロジェクトの詳細は、明日発行される「Nature」誌に登場します。
 内容は要するに、ヒレが肢へと進化しつつある構造を持っているということなのですが、今までに発見されていた動物は、魚っぽいヒレか両生類っぽい肢を持ったものばかりだったのですが、今回発見されたティクターリクは「手首のあるヒレ」というまさに中間形を示しているので、ミッシング・リンクだと主張されているわけです。

 ミッシング・リンクの発見に立ち会えるなどということはそうそうあることではありませんので、じっくりと味わわせてもらいたいと思っています。

 皆さまもどうぞお楽しみ下さい。

【追記】
 そう言えば、これはNaturePodcastでも取り上げられていて、サカナが陸に上がったのは暖かく浅い水辺だったということですが、気候変動と上陸に何か関連があるかと考えてみるとそれはあまりないのではないか、とコメントしていました。それよりはむしろ先に上陸していた植物やそれを食べる無脊椎動物がすでにたくさんいて、それらの無脊椎動物を餌としていたティクターリクが餌を求めて上陸したというふうに考えるほうが妥当ではないかということでした。私も、その説には同意したいところです。
# by stochinai | 2006-04-06 22:08 | 生物学 | Comments(3)

写真を拡大する練習

 すぅじぃさんに写真を大きくする方法を教えていただきましたので、31日に撮した上野恩賜公園の地図で練習してみます。
 
写真を拡大する練習_c0025115_20545092.jpg

 さて、この写真をクリックしてみてください。大きくなるでしょうか。

 すご~~い。大きくなりますね。

 すぅじぃさん、多謝!
# by stochinai | 2006-04-05 20:59 | コンピューター・ネット | Comments(1)

処分逃れか、自己防衛か

 労働者が雇用者からの不当な処置を受けた場合には自分を守る権利があります。また、雇用者は労働者に不適切な行為があった場合にはそれを処分する権利があります。

 日本は法治国家ですので、どちらの権利も法律によって規定されているはずですから、その法律を遵守して行われたことは適法で、適切な行為だと判断されるはずです。

 ところが、北大で起こった「今回の事件」に対してマスコミの論調は、合法的に行われた労働者の保身行為を非難しているように書かれています。

 北大教授のセクハラ、自主退職で処分できず
 教授は、セクハラ審査の終盤の3月18日に退職願を提出。大学側は23日に処分を伝えた。従来なら人事院規則により退職願の受理を保留できたが、法人化で職員は非公務員となり、「雇用解約を申し入れた日から2週間を経過すると雇用関係は終了する」との民法の適用対象となった。

 一方、教育公務員特例法は処分通知から2週間の異議申し立て期間を認めており、多くの国立大は法人化後も人事規定に同じ定めを設けたという。このため、処分確定には2週間が必要で、職員から通知前に退職願が出ると、退職が先に成立し、処分できなくなる。
 ここからは、ナイーブな感想です。

 私は雇用された一労働者として、もしも雇用側から不当な解雇などをされそうになったとしたら、同じ権利を行使したいと思います。

 しかし、一方でもしも報道されているような「被害者」からの訴えがあり、その訴えのは背後にある事実を教授も認めているのだとしたら、今回の教授の行動は卑劣のひとことにつきます。

 実名を明かせといっているのではありません。北大当局は事実を明らかにし、公表する義務があるのではないでしょうか。処分ができなくなったので、このまますべてを闇に葬り去るということになるのなら、類似の事件や事例が今後も起こることでしょうし、そうしたことが起こった場合には今回の措置に対して大学当局の責任は免れないと思います。

 大事なのは処分や懲戒よりも、被害者の保護と再発防止ではないでしょうか。それをやっているというのならば、なにをどのようにやっているのかホームページなどで公開してください。
# by stochinai | 2006-04-05 19:47 | つぶやき | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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