5号館を出て

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新しいウェブサイトと本

 今日、CoSTEPの受講生がウェブ制作実習で作成している「さっぽろサイエンス観光マップ」が公開されました。

 指導教員の方からの説明です。
これは、実習メンバーがそれぞれ、サイエンスの切り口で札幌のさまざまなスポットを分かりやすく楽しく紹介しようというコンセプトに基づいて、継続的に記事を追加していくブログタイプのサイトです。ブログの記事と、ウェブ上の地図が連動していますので、位置を確認することもできます。現在は第一回目の記事が掲載されているのみですが、5名の実習メンバーが交代で、だいたい3日に一度記事を追加していき、年度末までに合計40程の記事が掲載される予定です。

 ご覧になっていただければわかるのですが、これはブログを利用したホームページになっています。ブログを賢く利用した例として前にも「今日は何の日?」というプロジェクトをご紹介したことがありますが、今回のものはブログ・サービスを利用していながら普通のホームページっぽいところが売りかもしれません。

 それから、もう一つの売りはGoogle Mapsとの連携です。Hatenaを使ったのもこれが使えるからだと指導教員の方がおっしゃっていましたが、紹介されている記事が地図の上で示されるのでぐっと親近感がわきます。今となっては、数日前に紹介した昭文社の「ちず窓」が使えますので、Hatena以外のブログでも同じようなことが簡単にできます。

 もちろん、ホームページみたいではありますが、ブログのプログラムをそのまま使っていますから、コメントやトラックバックもできるようになっています。間違いを発見したり、感想がありましたらよろしくお願いいたします。

 これだけだと、あまりにも情報が少なすぎるという感じがいたしますので、もうひとつだけ追加しておきます。3年ほど前に中学校の理科の検定外教科書「新しい科学の教科書」というものを作った時に、検討委員として生物関係の原稿作成のお手伝いをさせていただきました。「ゆとり教育」の結果として、あまりにも内容が削減されすぎた中学校理科の検定教科書に対する対案として出されたこの本は、幸いにも多くの方の支持を得て、今でも売れ続けているようです。

 その本の成功に力を得て、高校の教科書も作ろうという話が持ち上がり、物理・化学・生物・地学の4冊の教科書をブルーバックスから出すことになりました。今度は、検討委員ではなく執筆をさせてもらいたいと申し出たところ、監修もやれと言われておっかなびっくり勤めさせていただきました。いろいろありましたが、苦節3年、ようやく形ができあがりました。

 月曜日に配送されてきた「ブルーバックス・メール 第63号(No. 63)」に、予告が出たように生物と化学が先行発売です。
【3】1月20日発売予定の新刊情報
★いずれも仮題、定価は未定です。
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●新しい高校生物の教科書   栃内新/左巻健男 編著
●新しい高校化学の教科書   左巻健男 編著
読んでわかるから面白い!
ブルーバックスから高校理科教科書シリーズが登場。
理科教育に情熱をかたむける現場の教師たちが、
3年の歳月をかけて作りあげた、現代人のための「検定外教科書」。
2月には『高校物理』『高校地学』が刊行予定。
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 生物に関しては、編集部長が「良くもこんなに情報を詰め込んだものだ」と驚かれるほど充実したものができました。それにはもちろん、執筆の各先生の努力が大きかったということもさることながら、この本が最終的形を整えるまでには、講談社内および社外の編集者の方々の「編集力」にかなりの部分を負っていることを認めざるを得ません。

 我々が専門分野で書く、論文や専門書などは最終原稿まですべてが著者の手で行われるものですが、ブルーバックスでは読者の側に立って徹底的な査読および改訂要求が何度も何度も行われます。「専門家」が独りよがりで書いた本は、たとえ一般向けとうたっていても一般の方々に受け入れられることは少ないのに対して、ブルーバックスからは時としてベストセラーが生まれる秘密のひとつを見せていただいたと思いました。

 結局のところ、我々がCoSTEPでようやくやり始めたサイエンス・コミュニケーションを、ブルーバックスでは何十年も前からやっていたということなのです。

 CoSTEPの目標のひとつが、ブルーバックスを越えることだと考えている今日この頃なのでした。
# by stochinai | 2005-12-21 23:52 | 教育 | Comments(1)
 まだ、あまり有名にはなっていないのですが、“世界一巨大なクリスマスツリー・プロジェクト”というものがあり、今年で3回目になります。BNNニュースからです。

 大通り西1丁目にあるテレビ塔の展望台から西の方を見下ろすと、遠近法によって大通公園そのものがクリスマスツリーに見えないこともないという発想なのですが、明日22日から4日間は特別にイベントが行われるそうです。

 イベントは、なんでも光るものを持ってきて大通公園に立つことで、どんな人でもクリスマスツリーの飾りになれるという企画で、幅100メートル、長さ1500メートルのツリーを作ろうというものです。

 ツリーの頂点となる西12丁目には午後5時から10時までの間サーチライトが据え付けられ、毎晩午後7時には西3丁目に集まった人を写真撮影してくれるそうです。あらかじめ500円を払って申し込んでおくと、その写真をポストカードにして送ってくれるそうです。

 昨年、1昨年の写真を見ると集まった人はかなり少なそうです。今年は3年目ですので、ここらでなんとかブレークしたいところでしょうが、どうでしょうか。

 クリスマスということで、北海道生まれのトナカイ7人の吉本サンタクロースも特別出演です。サンタクロースから、7つのスタンプをもらうとプレゼントももらえるそうですが、サンタクロースの顔は見ない方が良いみたいです。

 今年は千人、10年後には1万人というのが目標らしいので、つつましやかです。

 ちなみに、今年のよさこいソーラン祭りは、参加者(踊り手)が43000人、観客動員数は214万人だったとのことです。さすがですね。
# by stochinai | 2005-12-20 21:23 | 札幌・北海道 | Comments(4)
 この世の中で起こったことを完璧に記述することができるとすれば、完璧に記述されたことは「事実」と言えるのだと思います。しかし、「完璧に記述する」などということは明らかに不可能なことですから、100%の事実をすべて記述するなどということはできません。

 それにもかかわらず、人は本当のことを知りたいと思いますし、いろいろな言い分があった場合にはどちらが「本当に近い」のかを知りたいのだと思います。人生のいろいろな局面においては、どちらが本当でもかまわない場合もたくさんありますから、どちらがより本当らしいのかを争わなければならないのは、主に利害関係が生じた時です。

 今、世の中を騒がせている二つの「どっちが本当だ」を争う事態は、日本における一連のホテル・マンション耐震強度偽装事件と、韓国のクローンES細胞スキャンダルではないでしょうか。

 いずれの場合にも、スキャンダルが発覚した時点で、我々のようなほとんどの無関係者は誰がウソをついているのか、本当のことはどのあたりなのかを「なんとなく感じている」と思います。

 ところが、当事者達の言うことが我々がなんとなく感じていたこととが異なっていて、「そのようなことはありません」と主張する人が出てくるものですから話が混乱します。

 当事者の中には、私達が想像していたとおり、私はウソをついていましたし、とんでもない裏切り行為をしていました、と認める人も出てきたりするのですが、多くの場合そういう人は事件の中でも役割としては「小者」で、もちろん罪を罰せられたとしたらその人達だって一生を棒に振る可能性があるのですが、我々がなんとなく一番悪いのはこいつじゃないかとか、あるいは本当に悪いヤツはまだ出てきていない陰にいるんじゃないかと思っている人達は、最後の最後まで徹底的にしらを切り通すことが多いように思われます。政治家がからんだ「事件」などはだいたいがそうしていつの間にか飽きられて忘れられていくことが多いと思います。

 クローンES細胞スキャンダルでは、ファン・ウソク教授およびひょっとするとその陰で彼の研究を国家的プロジェクトにまで仕立てようとしていた政府関係者がそれで、耐震強度偽装事件に関しては最年長の総研の内河さんおよびひょっとするとその陰で彼らの挙動を見て見ぬ振りをしていたかもしれぬ官僚や行政・立法関係者がそういう疑惑の人達と言えると思います。

 ファン教授は「ヒトクローン胚から作ったES細胞は確かにあった」と主張しています。実は私もその件については事実なのではないかと「信じて」います。しかし、さまざまの事故が重なり、たくさんのクローンが失われてしまったことも、また事実なのでしょう。であるにもかかわらず、クローン胚からES細胞ができたという事実にウソはないのだから、ウソのデータを集めて論文を発表することも許されるだろうというのが彼の本心のように見えます。同じ科学者として、彼の気持ちはわからないでもないのですが、彼は今度は倫理的問題をきちんとクリアした上でもう一度たくさんのクローン胚由来のES細胞を作ってから論文を書くべきでした。

 理論的に大丈夫なのだから論文を書いても大丈夫ということにはならないという倫理観を、学生時代からきちんとたたき込まれていたならばこんな事態にならなかったかもしれません。そういう意味では、日本でも科学者の倫理教育はようやく猪についたばかりですから、日本の研究者にもかなり危ない精神構造の人はたくさんいるような気がします。明日は我が国の話だと思いました。

 翻って耐震強度偽造事件では、某ヘアーデザイナーという方がブログや日記で当事者も驚くような大量の「裏情報」を流しているといいます。(ここではあえて、リンクは張らないでおきます。)私もおそらくこのきっこさんというヘアーデザイナーの持っている情報のかなりの部分は信憑性の高いものだと信じています。しかし、いくらそれが限りなく真実に近いものであったとしても、しらを切り通している黒幕やさらにその陰にいる人間に「恐れ入りました」と誤らせることができるものにないのならば、それはやはり無いのと同じということになります。

 たとえ情報として「本当のこと」を握っていたとしても、それが当事者達に有無を言わせないほどの証拠と一緒につきつけられなければ意味がありません。技術や工学に関しての倫理教育もようやく大学レベルで始まったばかりですから、その教育を受けた人達が現場に出ていくまではまだ数年から十数年かかると思います。あるいは、そのくらい時間が経っても技術者倫理が徹底した世の中になるかどうかは未知です。

 ならば、いずれの場合も何かをした人達に対しても適切に処罰するシステムが、今必要だと思います。科学的な検証を重ねて、ここにある不正に関してはきちんと証明した上で、適切に処罰することが必要です。手に入る限りの情報を第3者の手によって確認し、専門家の手によって解析し、利害関係者といえどもそれを事実として認めざるを得ない証拠と一緒に提出して追求すること。科学も検察もその点においてはまったく同じだと思います。

 今ここでそれがそれができなければ、この手のスキャンダルはまだまだ続くことでしょう。

#本日のエントリーは諸条件により、ソースへのアクセスが不十分であることをあらかじめお断りしておきます。
# by stochinai | 2005-12-19 22:29 | つぶやき | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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