5号館を出て

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大学院入試

 昨日と今日は大学院博士前期(いわゆる修士)課程と、博士後期課程(いわゆる博士)課程の大学院入学試験がありました。新しい組織になっての始めての大学院入試です。

 競争倍率からみるとあまり激戦ではないように見えますが、個々の受験生にとってみたら、合格するか不合格になるか二つに一つの結果で示されるストレスフルなステップです。

 合格発表までは1週間ありますが、発表が終わったら、それまではなかなか本気になって取り組めなかった卒業研究に本格的に取り組み、来春2月の発表会へ向けて追い込みをかけていかなければなりません。

 もしも、運良く大学院修士課程に合格したとしても、修士を卒業して就職することを考えているならば、修士1年生は今年中(数年前までは12月頃からでしたが、最近ははやいところは9月頃から)に始まる就職活動を開始しなければなりません。

 つまり、4年生の卒業研究が4月から始まったとしても、どうしてもこの8月の大学院入試へ向けての勉強がありますので、それほど研究に集中できません。また、9月から卒業研究を開始して、そのテーマを修士課程にまで持ち上げるとしても、来年の9月には就職活動が始まります。運良く、その翌春までに就職が決まれば良いですが、下手をすると夏を過ぎて秋まで就職活動が続きます。

 さらに運良く、そこで就職できたとしても、たった2年しかない修士課程に1年のブランクが空いてしまいます。つまり、修士の研究は正味1年なのです。卒業研究から継続したとしても、修士論文までの研究期間は1年半です。大学院入試や就職活動がなければ3年間ある研究期間のはずですが、正味はその半分の1年半しかないという現実をどう考えたらよいでしょう。

 大学院入試勉強も就職活動も重要なことですので、そのために研究ができなくなったとしても、優先順位を変えるわけにはいきません。つまり、修士の研究期間というのは4年から継続した人でも1年半、修士から新しい研究室に入った人にとっては1年しかないことを前提にしなければならないのです。

 素人に毛の生えた学生が、たった1年か1年半研究に費やしても得られる成果などたかがしれています。そうであるならば、修士の2年間あるいは卒業研究からの3年間、実りの少ない研究活動にすべてを捧げるよりは、より効率よく自分を育てる様々な活動に宛てたほうが長い人生にとって資することが多いかもしれません。

 修士の研究あるいは修士の教育について、研究中心から教育中心へとシフトさせることを本気で考えるべきだと感じます。内実をできるだけ温存するような制度いじりはそろそろやめて、大学院教育の内容の根本的変革が必要ではないでしょうか。
# by stochinai | 2006-08-24 23:56 | 大学・高等教育 | Comments(8)

Gmailも一般公開

 昨日、Googleがワープロの使用権を一般公開したというエントリーを書いたところ、本日はあのGmailも一般公開されたというニュースが飛び込んできました。

 私はかなり前にGmailに関して否定的なエントリーを書いたことがあります。その時には、使ったことがなかったので憶測で書いたのですが、実をいうと今はユーザー登録をしていますので、もう少し具体的に書けます。

 先ほど、私が所属する動物学会とメールでやりとりしたものを、Gmailで表示させたところ本文を表示する画面の右に、医学書販売会社、研究職人材派遣会社、医学電子辞書、大学情報の日経進学ナビなどの広告が掲示されました。これは、差出人の所属などを含めたメールの内容に関連づけられているものに間違いないことは、すぐにわかります。

 もちろん人間が読んで宣伝をつけているわけではないのですが、機械が「読んで」内容を「解釈」しているということは、Googleも認めています。それは「Google 検索結果ページに表示される広告や、Google AdSense プログラムでウェブ上のコンテンツ ページに配信される広告と同じ仕組みで表示され」ているのだそうです。説明を引用します。

Gmail は技術ベースのプログラムで、広告および関連情報は完全に自動化されたプロセスで表示されます。Gmail では、AdSense プログラムと同じコンテキスト型広告配信技術を使用して、システムにより自動的に関連性の高い広告を抽出し配信しています。この技術により、電子メールや日々のニュースなどの動的に変化するコンテンツに関連した広告が表示されるようになっています。

広告や関連情報を表示する際に、電子メールの内容を人間がチェックすることはありません。
 つまり、メールの内容の文脈を解析しているということです。これが、メールに広告を付けるためだけに利用されている分には、ほとんど危険性はないと思われますが、もちろんメールユーザー全体の傾向などを解析するためにも使えますし、その目的に使っていないということはないでしょう。それは、Googleに限らず、先日書いたMicrosoft の Demographic Prediction でも、そうした手法を用いていると思われます。

 ただし、microsoftやGoogleといった大きな会社は、もしもそれが発覚した場合には倒産を覚悟しなければならないくらい非難されるでしょうから、個人を特定した情報利用をするとはとても思えませんので、多少は信頼してやっても良いかなと思っています。

 私が卒業生に推薦されてGmailを使い始めたのは、比較的最近のことですが、使ってみるとその便利さには捨てがたいものがあることがすぐにわかりました。

 もちろんどこからでも読み書きできるウェブメールとしても使えるのですが、普通のメーラーでpopダウンロードしたり、世界中どこからでも使えるsmtpサーバーが提供されていたりと、それだけでもかなり使い勝手が向上しそうです。しかも、Gmailに転送されてきたメールに、Gmailの中からもとのアドレスを使って返信したりすることもできるのです。

 さらに、貸してもらえるメールボックスの容量が8月23日現在では約2.7GBです。このくらいの大きさがあると、毎日どんなにメールをたくさん受け取っている人でも、3-4年分の全メールを削除せずに保存できます。つまり、普通の人だと一生分のメールを保存してもパンクしないようなサイズです。私も毎日受け取っている100通以上のメールをすべて転送して実験しているのですが、2ヶ月たってようやく6%が使われただけです。いずれにしても、容量を気にせずにあらゆるメールを転送できますので、ちょっと長めの外国旅行などの時などには重宝するはずです。

 このGmailは、日本では昨日までは招待制をとっており、誰かが紹介してくれないと利用できないしくみになっていました。私は外国の知らない人から招待してもらったのですが、ユーザーになる時に1名を招待する権利をもらいました。中味を読まれているみたいで気持ち悪いという人が多いので、つい最近まで招待する人がおらず持ち腐れになっていたのですが、先週末にようやくもらってくれる人に巡り会いました。

 しかし、今日からはそんな苦労がいらなくなりました。

これまで、Gmailは一般からのサービス申し込みを受け付けておらず、他のGmailユーザーからの招待を受けたユーザーのみ利用できる「招待制」を採用してきたが、23日からは日本のユーザーについて「登録制」による一般からの申し込みが可能となった。
 Googleでは、今後さらにサービスを充実させていくと言っているようです。このソフトの危険性も十分理解した上で、危険を避ける賢い使い方を心がけるならば、その可能性を利用することも悪くないソフトだと感じています。

 さて、あなたはどうしますか。申し込みサイトはこちらです。
# by stochinai | 2006-08-23 21:55 | コンピューター・ネット | Comments(5)

グーグルの無料ワープロ

 マイクロソフト・オフィスに対抗して、オープン・オフィスというフリーソフトが配布されています。何回か使ってみましたが、そんなに悪いとは思いませんでした。使わない唯一の理由は、他の人から渡されるマイクロソフトワードなどのファイルを、オープンオフィスで開くと、書式が微妙にくずれてしまうことがある(多い?)ということです。

 仕事上でファイルのやりとりをすることが多いので、そのたび毎に書式がくずれていたのでは、ストレスがたまるばかりではなく能率ががた落ちですので、なかなか使う機会のないオープンオフィスですが、書式を持ったファイルをやりとりするという「日本的慣行」さえ変わってくれれば、何も高いお金を出してマイクロソフトオフィスを買わなくても良いわけです。

 書類の多くは政府や地方公共団体がからんでいるものが多いので、そうした公的機関が一私企業であるマイクロソフト(やジャストシステム)のソフトの利用を強制するということは、重大な公共性違反だと思うのですが、訴訟が起こったという話も聞きません。それを良いことにワードやエクセルのファイルはどんどん公共の場での利用が増えているように思えます。

 そんな中で、ワードの将来に暗雲を投げかける(?)ようなニュースが飛び込んできました。CNET Japan の「グーグル、Writelyの利用受け付けを開始」がそれです。

 私は知らなかったのですが、Googleが5カ月前にWritelyというオンラインで使うワードプロセッサの会社を買収していたようです。

 オンラインのワードプロセッサというのは、こちらのコンピューターにはワードなどのワープロソフトがインストールされていなくても、ウェブブラウザでソフトのあるサイトにアクセスすることで利用できるワープロです。

 そのWritelyというワープロは、Googleに買収されてからこれまでは招待されたメンバー以外は利用することができなかったようなのですが、数日前から一般に開放されたとのことです。今はここにアクセスしてメールアドレスとパスワードを登録するだけで誰でもが使えるようになっています。早速、私も申し込んでみましたが、1-2分で使えるようになりました。

 画面は英語だけで書かれていますが、日本語もまったく問題なく使えます。手許にあるワードのファイルもアップロードして読み書きできます。やはり、様々な書式は壊れてしまいますので、申請書などには使えませんが。図も取り込んでくれますので、使い方を工夫すればかなり使えると思いました。

 何よりも、オンラインで使えるものですから、手ぶらで世界中のどこへ行っても、ネットにつながったコンピューターさえあれば原稿書きを継続できるというところが強みです。もちろん、作成した原稿をプリントアウトしたり、ダウンロードして手許にファイルを持ってくることもできます。

 さらに、ネット上で複数の人間で同時に作業をすることができるようにもなっており、リアルタイムで原稿の打ち合わせなどができます。これはマイクロソフトオフィスやオープンオフィスなどでは不可能な素晴らしい機能です。

 バージョン管理機能などもあるようですので、修正を元に戻したり、古いバージョンと新しいバージョンを比較したりということもできます。

 まだまだ未完成なソフトであるとは感じますが、高価なソフトがいらないこと、個人のハードもいらないこと、ファイルを保存してくれるので事故が少ないこと、遠距離にいる複数の人間で作業できることなど、その将来性を感じさせてくれる機能はたっぷりあると感じました。

 Googleの製品ということで、ワープロで作った書類がすべて読まれてしまうのではないかとか、コマーシャルがはいるのではないかというような心配が持たれるわけですが、幸いなことに現時点では画面にすらコマーシャルは出てこない仕様になっています(^^)。中味が読まれていないという保証はもちろん、ありません。

 とにかくタダですので、一度お試しになってみてください。コンピューターの未来をちょっぴり味わえる感覚が得られます。
# by stochinai | 2006-08-22 22:27 | コンピューター・ネット | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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