5号館を出て

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 とある高校の先生がご自身のブログで、寝屋川の事件が起こった直後に、きわめて適切なコメントを出されています。

 私もこの方の結論を支持します。

   この学校の対応は問題なかったということです。
   教員が不審者の対応に当たったじゃないですか。
   落命する教員がありながらも生徒は守り抜いたじゃないですか。
   校長・教頭が出張中という指示系統のトップがいない状態でも、
   この小学校の教員集団は適切に動いたのです。

 問題がなかったどころか、現場にいる先生方だけで信じられないくらい適切な対応ができた素晴らしい例と言えるほどだと思います。亡くなられた先生は、ご自分の命をかけて、事件が最悪のシナリオをたどることを阻止したことは間違いないと思います。

 事件後しばらくたって、例によって警察がマスコミを通じて少しずつ情報を流し始めていますが、防犯カメラも設置されていましたし、校門も登下校時以外はかんぬきをかけ施錠されていたようですし、不審者を校舎外へ誘導しようとしたり、中で暴れる犯人に刺股で対抗しようとしたりと、この学校は普段からきちんと事件防止のための措置をとっていましたし、当日も先生方は大変な状況の中で子ども達を守るためにきわめて適切な行動を取っておられたのです。

 非常に残念なことですが、今の日本ではこの手の犯罪を完全に予防することは不可能だと思います。

 殺人事件は、日本中のどこででも、時間と場所を選ばずに起こるようになっています。そんな中で、学校だからといって聖域にはならないと思います。逆に、学校特有の事件の結果としての殺人事件すら起こりうると思います。

 今までもひとつの事件が起こるたびに、同じ事件を起こさないためにさまざまな対策が取られてきていると思います。しかし、残念ながら次の事件はその対策をすり抜ける形で起こり続けてきたのだと思います。

 そのたびに、「なぜ」とか「心の闇」とかおどろおどろしいタイトルをつけたマスコミの記事が町中に氾濫し、教育委員会などがなんらかの対策を打ち出す、そうしたことを繰り返してきて、それでもなお事件は起こり続けています。

 もちろん、防犯カメラとか集団登下校とか、明らかに犯罪の予防に役立っていることはたくさんあると思いますので、思いつく限りの策を講じることは良いことだと思います。しかし、そろそろ対策のためのハードウェアは底をついたと言えるのではないでしょうか。アメリカのようにガードマンを常駐させても、事件を撲滅することはできません。ガードマンが殺されたりもするでしょう。

 つまり、どんなに対策を講じても学校に行くことを止めない限り、学校で事件や事故に巻き込まれる可能性が確実に存在するのが、今の日本という国なのだと思います。

 事件は必ずおこりますから、起こさないための対策と同時に、起こった時に犠牲を最小限に抑え、事件をできる限り短時間で解決するための方法も考えておくべきだと思います。

 いつも、こういう事件の後に出てくる対策というものは、事件の再発を防ぐためというものが多いように思いますが、それと同時に起こった事件にどのように対処するかのマニュアルも作って、国民全員に周知徹底させておいてもらいたいものです。先生達だけに任せるのではなく、父兄や学校のまわりの住民も学校を守るために動けることはあると思います。

 遅ればせながら、鴨崎満明さんのご冥福をお祈りいたします。あなたが命をかけて子ども達を守ってくれたことは、忘れません。
# by stochinai | 2005-02-19 18:10 | 教育 | Comments(3)
 2月17日発行のNatureに、おもしろい論文がいくつか同時掲載されています。

生化学:ヒトのメラノプシンが添加された哺乳類細胞は光応答性となる
Addition of human melanopsin renders mammalian cells photoresponsive
Z. Melyan, E. E. Tarttelin, J. Bellingham, R. J. Lucas & M. W. Hankins
Page 741

細胞:メラノプシンの異種発現による光感受性の誘導
Induction of photosensitivity by heterologous expression of melanopsin
Xudong Qiu, Tida Kumbalasiri, Stephanie M. Carlson, Kwoon Y. Wong, Vanitha Krishna, Ignacio Provencio & David M. Berson
Page 745

視覚:霊長類網膜中のメラノプシン発現神経節細胞は色と照度をシグナルとしてLGNに投射する
Melanopsin-expressing ganglion cells in primate retina signal colour and irradiance and project to the LGN
Dennis M. Dacey, Hsi-Wen Liao, Beth B. Peterson, Farrel R. Robinson, Vivianne C. Smith, Joel Pokorny, King-Wai Yau & Paul D. Gamlin
Page 749

 我々は今まで、我々ヒトを含む脊椎動物の眼の中で、光を感じるのは網膜の一番外側にある桿体細胞と錐体細胞といういわゆる視細胞だと信じてきたわけですが、実はそれらの細胞から光を受けたという情報を脳へと伝える働きだけをしていると考えられてきた視神経細胞(神経節細胞:これが網膜の一番内側、つまり光の当たる側にあります)も、光を「感じている」ということが証明されたという論文です。

 その前段階として、遺伝的に桿体細胞も錐体細胞も持たない、つまり目の見えないマウスも、光を感じて日周期に同調した行動をとることが知られていたという情報があります。しかし、こうしたマウスも目そのものを除去してしまうと日周期を感じることができなくなるのです。

 視細胞がなくても光を感じて、行動などを日周期に合わせることができるが、眼球がすべてなくなるとそれができなくなるということは、眼球にある視細胞以外の細胞も光を感じていると考えざるを得ないわけです。

 そして、どんな細胞でも、メラノプシンというタンパク質とレチナルデヒドという物質がありさえすれば(外部から入れてやったとしても)、光を感じることができるようになるということも示されています。

 この論文を見て、10年くらい前に読んだ、日周リズムを失った子供に膝の裏に、定期的に強い光をあてることで日周リズムを取り戻させることができるという(ちょっと怪しげなニュースを思い出しました。そのニュースも、このNatureか同じような週間科学誌のScienceに載っていたように記憶しているのですが、その時は笑い話のように扱われていた記憶があります。

 しかし、今回の論文をみると膝のうらに同じような光を感じる神経細胞がある可能性は否定できないと思いました。

 生物学はまだまだ新発見が続きそうです。
# by stochinai | 2005-02-18 22:59 | 生物学 | Comments(4)

自民党のホリエモン攻撃

 私は個人的にはホリエモンの思想は好きにはなれないのですが、彼は何も違法なことをしているわけではないとも思っています。嫌いだけれども彼は悪くない、と思っています。

 どんな手を使っても、違法なことさえしなければ、お金を儲けたものが勝ちなのだ、と私は教えられてきました。もちろん、学校では「そうではない」と習いましたが、現実の社会はそこかしこで、そちらの方が「正しい」ことを示していました。

 それは戦後の与党の思想であり、それについてくることができないやつはぐうたらで弱いやつで、落ちこぼれなのだと発破をかけ続けられてきた感覚があります。

  そういう教育の申し子がホリエモンであり、彼はそういう政権政党からは褒められこそすれ責められる理由はまったくないように思えるのですが、なぜか政権与党側が彼を一斉に非難し始めたようです。

 朝日「『企業買収、日本には』 自民幹部からライブドア批判」、日経「ライブドアに批判続出・与党内で」、産経「自民党幹部ら『好ましくない』 ライブドア批判相次ぐ

 不思議な気がしますが、わかるような気もします。

 いままでは財界と呼ばれるところにいる大人が自分たちで独占してきたおいしい話を、新参の若者もやり始めてしまったのです。言いたいことは、「俺たちがやるのはいいけど、君は10年早いよ」ということだと思いました。

 大人が子どもに向かって、「君たちもいつか大人になってたくさんのお金を持つことができたら、こんなに楽しいマネーゲームというものができるんだからがんばりなさいね」と言っているうちに、子どものくせに大金を手にしたやつが大人の世界に殴り込みをかけてきたので、動揺しているというところでしょう。

 だいたい、自民党の先生方が「金さえ持っていれば何でもできるような風潮をはびこらせるのは良くない」っていうのは、ブラックジョーク以外のなにものでもないですよねえ。

 森前首相が、「金さえあれば何でもいい、力ずくでやれるという考え方は今(戦後)の教育の成果なのかなあ」と語ったといいますから、自覚はあるのかもしれないですね。
# by stochinai | 2005-02-18 21:20 | 教育 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai