5号館を出て

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CoSTEP Week!

 今日から、CoSTEPが、公開講義を連日打ち抜くCoSTEP Week!が始まりました。

 初日ということで、最初にCoSTEPの紹介が行われたようですが、第2講目にCoSTEPが誇る科学技術コミュニケーション・デザイナーのO津さんの体験型授業「科学をデザインしよう」があるというので、O津ファンの私としては取るものも取りあえず駆けつけたのでした。

 科学技術に限らず、コミュニケーションの入り口にはビジュアルなコンタクトがあるものです。このファーストコンタクトの正否が、必ずしも目的意識や強い興味を持っているわけではない「普通の人々」に対するコミュニケーションが始められるのか、拒否されるのかを大きく左右する重要なポイントになります。

 それにもかかわらず、科学者・研究者・大学の先生と呼ばれる人には、内容さえ確かなものであるならば、そのプレゼンテーションの仕方や包装に気を遣う必要などないのだと考えている人が、まだまだたくさんいらっしゃいます。確かに、今までのように付き合う相手が、同じ科学者・研究者・大学の先生あるいは彼らに逆らうことのできない学生だけという閉じた空間においては、それでも問題なくやってこられたという事情はあるのでしょう。

 学術研究員としてデザイナーが参加しているプロジェクトは珍しいかもしれません。しかし、過去1年あまりのCoSTEPの活動を広報するポスター、報告書、広報チラシなどを振り返ってみてみると、科学コミュニケーションにおけるデザインの重要性が強く印象づけられます。

 最近は、研究者も自分の研究を市民に説明する義務があるということで、ホームページや市民講演会、サイエンスカフェなども盛んに行われるようになり、さすがに大きなお金を持っている組織やプロジェクトでは、プロが作ったそれなりに立派なポスターやホームページも多くなってきました。しかし、残念ながらまだまだデザインにまで気を(お金を?)使って、ホームページやポスター、チラシなどを作っている例は少ないように思われます。

 お金がないならば仕方がありませんが、ある程度お金を使える、組織の顔のようなサイトやポスターまでもが、素人のやっつけ仕事のようなものではいけないと思います。

 一方、ではそれを専門家に頼もうかという時に、科学技術コミュニケーション関係のデザインを専門にやっておられる方はまだまだ少ないのが現実です。そこで、CoSTEPの出番ということですね。今日の授業の中でも、CoSTEP受講生の方が作った作品(ポスター)がいくつか紹介されていましたが、短期間の実習の中からなかなかスゴイものが出てきています。

 せっかくそうして、身に付いた(あるいは開発された)能力を持った人が養成された一方で、大学や研究所などではそのような能力を必要としている状況があるのですから、後はあまり深く考えることなく、そうした人材をどんどんと使うことで、両者のハッピーな関係が築かれるところまできていると感じます。

 デザイナーも含めせっかく養成した科学技術コミュニケーターが活躍できる場を用意することで、大学や研究所の抱えている問題がひとつ解決するのですから、そうしたところを運営なさっておられる方は積極的に科学技術コミュニケーターを使わないと損をすると思います。

 まだまだ使えるコミュニケーターは少ないですから、他に取られる前につかまえておいたほうが良いでしょう。全国の、大学・研究所のみなさん、真剣に考える時期ですよ。

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 ちなみに、CoSTEP Week!明日からのスケジュールを転載しておきます。

12月6日 (水) 日本国際賞受賞記念講演
18:30~20:00 「奇跡の高脂血症薬スタチン発見への道のり」
遠藤 章 (株式会社バイオファーム研究所 所長)

12月7日 (木)
18:30~20:00 「最近話題の人獣共通感染症」
高島郁夫 (北大大学院獣医学研究科公衆衛生学教室 教授)

12月8日 (金)
18:30~20:00 「天プラの挑戦~地域の力を活かした天文学普及活動」
高梨直紘・平松正顕
(東京大学大学院生・天文学普及集団「天文学とプラネタリウム」)

12月9日 (土)
14:00~15:45 第15回サイエンス・カフェ札幌 「眠れない私と生物時計」
本間研一 (北大大学院医学研究科長・教授)
  他はすべて学術交流会館ですが、サイエンスカフェ札幌だけは紀伊国屋で行われます。

 また翌12月10日(日)の午後1時30分からは、CoSTEP Week!の催しというわけではありませんが、「北のくらしを護る ~小樽生まれの不凍給水栓~」をテーマに、ウイングベイ小樽で、CoSTEPが共催する“ビズ・サイエンスカフェおたる”が開かれます。
# by stochinai | 2006-12-05 22:12 | CoSTEP | Comments(2)

HUSCAP応援団

 先週30日のエントリー「インターネット時代の学術情報と研究者そして図書館」に、超大物からコメントがついてしまいました(大汗)。

 なんと、HUSCAPに先行して兄貴分にあたる機関リポジトリを立ち上げられた、千葉大学付属図書館長の土屋俊さんからなのです。大学の図書館長と言えば、私の感覚では学長さんの次に偉い人という立場の方で、口をきいていただくだけでも緊張してしまう相手です。

 その方が、エントリーにコメントを書こうとしてくださったようなのですが、サーバーが「分量が多いので、2973文字減らせ」という不埒なメッセージを吐いて失礼をいたしたとのことです。エキサイト・ブログのコメントの短さはちょっと異常なところもありますが、平にお許し下さい。

 というわけで、北大図書館HUSCAPチームを介して転送されてきた、土屋さんのコメントをここに転載させていただきます。基本的には、私の文章の中にある「シリアルズ・クライシス」に関して、事実誤認(歴史的時間軸が間違っている!)があるということのご指摘が主なものです。これに関しては、そもそも私がきちんと一次資料にあたって再調査していなかったことを素直に告白させていただきます。そして、訂正して頂いたことに深く感謝します。

 また、私の認識とは異なり、電子ジャーナルの普及のおかげで、いわゆる小規模大学でも利用可能タイトル増がかなり実現されているということで、私の判断はミスリーディングではないかというご指摘です。ただしこの点に関しては、ひょっとすると誤認というよりは、全学的効率化の陰で、小規模な研究分野の雑誌タイトルの購読状況は低下しているということも考えられますので、もう少しミクロに調べてみたいと思います。

 あとは、実際に読んでいただいて、よろしければ皆さまからのコメントなどをいただければ、お互いに有益が議論ができるかと思われますので、よろしくお願いします。

 --------(以下、転載:土屋さんのコメント)--------

 重要な指摘が多いと思いますが、若干の点について事実認識がちょっとちがうのではないかと思いますので、指摘させてください。時間の関係で、とりあえずは、「シリアズル・クライシス」についてのみ述べます。stochinaiさんは、この「シリアルズ・クライシス」を電子ジャーナル化の進展と結びつけて説明されていますが、これは誤りです。学術雑誌の価格高騰問題をシリアルズ・クライシスと北米の図書館員が呼び始めたのは、1980年代のことです。この時代にはまだ電子ジャーナルは登場していません。むしろ、価格高騰の原因は出版形態が印刷物によっていたからであると考えられます。すなわち、印刷物の場合には、製作コストを部数で割ったものがタイトルあたり単価の基礎となり、部数減は直ちに単価の上昇をもたらすからです(もちろん、商業出版者の場合には利益を上乗せしますが)。当時の出版者は、学術情報は学術研究に不可欠だからかならず必要とするところがあるだろうということで出版をつづけて、部数減には単価をあげることで単純に対応した結果、価格の急上昇(70年代半ばと90年代半ばを比較したときに名目で平均10倍、インフレ調整して3倍弱)が生じたわけです。ただし、このことは商業出版者だけではなく、学会出版者においても同様であったことが、たとえば、King and Tenopir, TowardElectronic Journals(2000)に報告されています。

 電子ジャーナルの時代の到来は、因果関係はかなり複雑なものではありますが、この価格高騰時代を終わらせたと考えられます。とくに商業出版者の刊行雑誌については、ここ数年の値上げはかつてのシリアルズ・クライシスの時代と比較にならない低い率になっています。たとえば、かつては2桁のパーセントの値上げが不思議でなかったのにたいして、2006年から2007年にかけての悪名高きエルゼビア社のカタログ価格の平均上昇率は5.5%でした。もちろん、5.5%の値上がりはこまったものなのですが、シリアルズ・クライシスの特徴が、雑誌タイトルのキャンセルであったとすると、ほとんどの国立大学で2000年頃の購読雑誌タイトル数よりもはるかに多いタイトルが利用可能となっていることを考えると、現在の日本の状況について「シリアルズ・クライシス」という言葉とつかって特徴づけることは少なくともミスリーディングだと思います。また、この利用可能タイトル増の現象は小規模大学でも相当に実現していますので、この点についてもstochinaiさんの文章のこの箇所についてはちょっと気になります。

 もっとも、このように歴史的な経緯とは別に学術定期刊行物の将来を価格面から考えて「危機」であるということについては賛成です。ただし、値上げの原因としてしばしば指摘されて、かなり納得してしまうのが、論文の刊行数の増大であると考えられます。もちろん、rejection rateを上げれば刊行論文数は増えませんが、rejectするためにも査読をおこなうなどのコスト(実際には、無料奉仕がほとんどでしょうが、その管理の経費)は残りますので、実際に問題なのは刊行論文数というよりは、執筆論文数の総体としての増加が問題なのでしょう。しかし。「論文を書くな」とはいえませんし、日本の緊縮財政下ですら、科学技術関係予算はやや別扱いが続いています。また、アジア地域では先進国志向の開発政策をとる国はひとつだけではありません。となると、いくら電子ジャーナル化をすすめてもこればかりはどうにもならないので、査読なしで機関リポジトリに掲載することで刊行とすることにしたいところですが、そうするとこれまでやってきた「査読による品質保証」はたぶん簡単にはできなくなります。

 それ以外の点についてはほぼ賛成なのですが、もうひとつ気になるのは、機関リポジトリにおける「著者最終稿」神話です。機関りポジトリの立場としては、著者最終稿を掲載しなければならないということはありません。プレプリントでもかまいませんし、電子出版されたファイルそのものであってもかまわないわけです。今、著者最終稿にこだわっているのは、エルゼビアのような商業出版者が中心です。機関リポジトリを推進する人がそのような商業出版者の態度を前提とするというのはかなり皮肉な状況でしょう。これは、出版者が付加価値をつけた結果が刊行されたファイルであるので、著者だからといってこの付加価値をただで使わせることはないという考え方が基本です。しかし、学会によっては、自分たちが責任をもって刊行したものを機関リポジトリにもおいておくことが学術的には正しいと考えるところもあります。また、いずれにせよ、自分の書いた論文を機関リポジトリに搭載することは著者が自分の権利として行うことですので、著作権が譲渡されていないものについては著者は何をしてもかまわないはずです。 しかし、HUSCAPさんにおかれてはがんばってください。

 --------(ここまで、転載:土屋さんのコメント)--------

 「HUSCAPさんにおかれてはがんばってください」がうれしいですね。

 どうもありがとうございました。m(_._)m
# by stochinai | 2006-12-04 20:40 | 大学・高等教育 | Comments(0)
【第一次意向投票の結果】

 12時30分に発表された第一次意向投票の結果は、以下のとおりでした。

 第1位  佐伯 浩 ---- 262票
 第2位  藤田 正一 --- 214票
 第3位  本間 研一 --- 212票

 第4位  山内 晧平 --- 196票
 第5位  長田 義仁 --- 145票
 第6位  五十嵐 靖之 -- 121票

  計          --- 1150票

 この結果、午後1時30分から2時45分まで、上位3名を対象に第二次意向投票が行われます。

【第二次意向投票の結果】

 4時30分頃に発表になった第二次意向投票の結果です。

 第1位  佐伯 浩 ---- 459票 (+197票)
 第2位  本間 研一 --- 387票 (+175票)

 第3位  藤田 正一 --- 376票 (+162票)

  計         ---- 1222票

 この結果、投票総数の過半数の票を得た候補者がなかったため、上位2名を対象に決選意向投票が行われます。

【決選意向投票の結果】

 7時30分頃に決選の結果が発表されました。

 第1位  佐伯 浩 ---- 667票 (+208票)

 第2位  本間 研一 --- 488票 (+101票)

  計         ---- 1155票

 この結果をもとに、12月7日に総長選考会議委員による投票が行われて、新しい学長が決定します。

 票の動きを見ていると、いろいろなことが想像されます。特に、票の加算具合と総計の変化が興味深いと思いました。
# by stochinai | 2006-12-04 13:19 | 大学・高等教育 | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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