5号館を出て

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 ちょっとショッキングなニュースが飛び込んできました。

 読売オンラインの「600万円の会員権買えば東大病院でがん検診」です。

 600万円の会員権を買うと、東大病院(東京都文京区)でがん検診を受けられるサービスに、6月の募集開始からこれまでに100件余の申し込みがあった。

 6月からいままで5ヶ月くらいあったわけですから、それで100件というのはそんなに多い数とも思えませんが、「費用は15年間(検診16回分)の会員権が600万円、さらに25万円の年会費」ということですので、計975万円になります。これだけのお金を出せる人はよほどの勝ち組ということになるんでしょうが、やはり勝ち組は少数ということでしょうか。

 検診開始は、2006年の秋を予定していて、約3,500名の会員を募集する予定ということですが、あと3,400名も集まるものでしょうか。

 なんだか東大がダイレクトにえげつない金儲け仕事を始めたようにも読める記事ですが、日経ネットによるとリゾートトラストというレジャー産業が、東大病院が建設中の新中央診療棟Ⅱ期8~9F部分に設置予定の「22世紀医療センター」に開設される「ハイメディック・東大病院」というものを建てて、そこに東大病院の医師を呼んで診察をお願いするというようなシステムのようです。

 しかし、いくら法人になったといっても税金で運営されている大学病院が一部の勝ち組大金持ちにしか使えないサービスに荷担するというのはいかがなものでしょう。

 東大側のコメントもかなり苦しいものです。

 東大病院の大友邦・放射線科教授は「一部の裕福な人に特定のサービスを提供することへの批判は覚悟している」としながらも、「得られたデータはがん予防研究に役立てるし、提携会社からは一般患者用の機器の寄付もある。この事業によって困る人はおらず、目指す医療や研究の実現のためには、自分たちで経済基盤を確立することも必要だ」と説明する。

 この事業で迷惑を受ける人はいないという解釈で本当にいいんでしょうか。
# by stochinai | 2005-10-19 18:10 | つぶやき | Comments(5)

ブログを使いこなす

 1日遅れで科学研究費の申請書もなんとか出せたので、そろそろ来月の演習「ブログ・コミュニケーション」に向けての準備などをしなければならないと考え始めているところです。もちろん、その一週間前にある科学技術社会論学会のワークショップの準備もしなければなりませんが、こちらも私のテーマは「ウェブログは科学コミュニケーションのツールになるのか」ということなので、まあ同じ内容を使い回せば良いかなというふうに思っております。(それを前提に、参加を承知したという経緯がありますので、許してもらえるはずです。学会のみなさま、ごめんなさい。)

 受講生に何か役に立つ話をしなければならないのに、実は私はそれほどブログを使いこなしていないという事実がありますので、愛用しているgooRSSリーダーのキーワード・チェック機能を使ってみることにしました。

 今まで使っていた機能は、ただ単にRSSサイトを登録して新着記事をチェックしていただけです。もちろん、チェックしたいブログが100近くなるとこの機能だけでも十分にありがたく、もはや手放すことはできませんが、同じRSSリーダーに付いているキーワード検索機能は使ったこともありませんでした。というよりも、あらかじめキーワードを設定しておいて、それにひっかかるブログ記事を探すという発想自体があまりピンとこなかったということです。

 しかし、CoSTEPの授業もありますし、「自分の使っているブログ検索ソフトも使いこなさずに、なにがブログコミュニケーションよ」という天の声というか良心の叫びに背中を押されて、数日前から「CoSTEP」というワードをタイトルおよび本文に持つブログを、gooブログ検索で探してもらうという設定にしておきました。

 そうしたところ、もちろん引っかかってくるのは自分あるいはCoSTEP関係者の書いた記事がほとんどなのですが、意外なところでCoSTEPが話題になっていることが発見できたのです。

 ついさきほど検索されたエントリーは「気になる本とニュース」さんのところの「サイエンスカフェに学ぶ」というエントリーです。CoSTEPの文字は以下の文章の中に見いだされます。

 サイエンスカフェというのがあることを、いくつかのブログから教えてもらった。東大には「科学技術インタープリター養成プログラム」というのがあるそうです。北大科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)というところの方が始めたのかな?(すみません、このあたりはまだ情報収集が不十分です)

 う~ん、これを読むとあたかもサイエンスカフェがCoSTEPの発明品であるかのごとくに誤解されていることがわかります。違うんですよ。我々も真似というか導入しただけなのです。もちろん、CoSTEP独自のやり方でカフェをやろうとしてはいますが、カフェはもともと外国(イギリス)で始められたものです。誤解されたことはうれしくなくはない(悪い表現ですね。「うれしい」が正しい)のですが、とりあえず正しい把握をお願いいたします。

 とまあRSSリーダーのキーワード検索機能のおかげで、CoSTEPのことを引用していただいている方に巡り会えたのですが、これがひょっとすると千載一遇の巡り会いになるかもしれないと思ったのが、この方が日本子ども学会の関係者らしいということと、「チャイルド・サイエンス・カフェっていうのをつくれないかなぁと真剣に思っ」っていらっしゃるとのこと。これは、我がCoSTEPの狙いとかなり近いものがあると感じました。

 CoSTEPが始めたコミュニティFMのラジオ番組「科学探検隊コーステップ」は、小学生も出演する「研究室に行ってみよう」や「やさしいんぐりっしゅ」など、かなり子どもを意識したものになっています。

 私はあまり得意な分野ではないのですが、CoSTEPには子どもたちへのサイエンスコミュニケーションやサイエンスカフェなどに関してはかなりの専門家がおります。コンタクトを取っていただければ、必ずやお互いのためになることは間違いないと感じました。

 まずはCoSTEPのホームページをご覧頂いた上で、お互いのコラボの道などを探っていければ素晴らしいのではないかと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。
# by stochinai | 2005-10-18 23:00 | CoSTEP | Comments(2)

ブログを使い倒す

 ブログというものは、記事(エントリー)やそれに対するコメントさらにはトラックバックをつなげるしかけにすぎません。

 あちこちにある様々なブログサイトには、少しずつ異なる特徴はあるものの、共通の約束事(というよりはデフォルトの仕様)があります。

 それは、記事は新しい記事から古い記事へと時系列に従って並ぶということ、禁止にするという選択もできますが、普通の記事には読者が自由にコメントを付けたり、トラックバックを送ったりする権利を有するということです。

 このエキサイト・ブログもそうですが、ほとんどのブログ・エントリーは投稿時間を故意に設定することができます。そのしかけを使って、未来の時間(例えば今年の11月1日)を設定した記事を書くと、その記事は設定した日を過ぎるまでは毎日ブログページのトップに居座り続けることになります。この機能を使って、毎日いらっしゃる読者の方に最初に読んでもらいたい注意事項などを掲示しているところもあります。

 逆の使い方もできるのです。例えば、1957年の10月4日に世界初の人工衛星がソビエト連邦(今のロシア)から打ち上げられて成功しています。その日付を付けたブログエントリーを書くと、とてつもなくうしろの方にエントリーを置くことができます。

 この仕掛けをどんどん拡張していくと、膨大な世界史の日記ブログを作ることができることになります。良く「ブログは日記である」などと説明されることがありますが、ブログを使って世界史日記を作ろうとしている人達がいます。

 Wisdom96という北海道の石狩管内の小中高校の先生を中心に構成されている理科サークルがあります。私もちょっとお世話になったりしているのですが、「理科サークル」とか「北海道」とかの枠を遙かに越えた活動を活発にしかも息長く続けているみなさんの集まりです。

 そのWisdom96の中心メンバーであるA野さんと、学校の先生でもなく東京に住んでいらっしゃるコンピューターに詳しいK嶋さんが仕掛け人となったこのプロジェクトに、Wisdom96に参加しておられる方々が続々と名乗りを挙げて、どんどんと盛り上がってきているようです。ということはブログに書き込まれる世界史日記のエントリーが日々増殖中ということです。

 「はじめに 「今日は何の日」プロジェクト」というエントリーが、今月末の未来の日付になっていて、最初にきています。まずは、これを読むとこの世界史日記ブログがどのような意図で作られているかがわかります。

 エントリーはまだまだ発展途上ですが、本日現在でもうすでに、「ノー・レジ袋の日」始まる(2002/10/5)から、元寇襲来~「文永の役」に神風は吹いたのか?1274/10/20までの、700年以上をカバーする壮大なブログになっており、この先が楽しみです。

 さらにただのブログ仕様のままだと、データの検索に問題があるということで、K嶋さんがサラサラと検索プログラムを作ってくれたので、とんでもなくパワフルな世界史日記データベースの入れ物が誕生しました。あとは、データが増えるのを楽しみにしていれば良いということになります。

 私の知る限り、ブログをデータベースの入れ物としてこんなふうに利用しているケースは始めて見ました。データベースですから、データに間違いがあったりさらに発展させたいというような時には、ブログの基本機能であるコメントとトラックバックが活躍してくれることが期待されます。訂正機能と拡張機能を持ったデータベースです。

 みんなで作る辞書としてはWikiが有名ですが、ただのブログをそのまんま使うだけでこれだけのものができてしまうのですから、まったく頭は使いようということです。これもブログ・コミュニケーションのひとつの姿ということになるのでしょうが、こういう予想もしなかった使われ方をされて力を発揮するというのが新しいテクノロジーの特徴なのかもしれません。

 我々の身近にあるものの中にも、まだまだ使い倒すところまで使い切っていないものがたくさんあるに違いありません。最小限の努力と最低限の資本投入によって、信じられないほどの効果を得られるのがネットの特徴のひとつだと思います。

 まだまだ、眠っている可能性がたくさんありそうに思えてきませんか?
# by stochinai | 2005-10-17 22:46 | コンピューター・ネット | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai