5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
 なんとまあ、腰の軽いことでしょう。去年まで、我々の雇用者だった文科省です。今朝の朝日新聞一面トップで「生活科も見直し検討、中教審で議論へ」と出ています。

 先日は、わずか3年前から始まったばかりの「総合的な学習の時間」を、中山文部科学相が削減も含めた見直しの意向を示したというニュースがありました。それから、10日あまりでの矢継ぎ早の改革提案が出されています。

 ちょっと待ってください。

 今までも、そうやってちょっとした外圧があると次から次へと拙速な対応をして失敗を繰り返してきたツケを、また同じ拙速な対応でしのごうというのでしょうか。もういい加減で、アイ**から借りた借金を、プロ**で借りて返すようなことを繰り返すのは止めてください。

 教育はそれほどのお金をかけずに目立つ改革を簡単にできるので、業績の草刈り場として政権や大臣に弄ばれてきていると思います。被害者も、子どもやその父兄という政治的に力を持たない人たちですので、反対運動も起こりにくいことと、日教組という反対勢力が力を失ってきたのを良いことに、目を覆うばかりの「改革」の嵐が吹き荒れています。(私のいる大学でも、大学院の重点化、教養部の廃止、理学部の改組、法人化というようなものがたった10年くらいの間に起こったことです。そして、今まだ大学院が大々的に改組されようとしていたり、研究から教育への再シフトが起こりそうになっていたりと、内部にいる人間にも理解不能な速度で変化し続けています。)

 確かに生活科や総合的な学習というのは、現場の教師にとって負担が大きく、文科省からの適切なバックアップが得られない現状の下で、満足できる結果が得られていない実情もあったことでしょう。しかし、生活科を10年続けてきて、かなりの実績やノウハウが蓄積されてきて、自分たちの成功例を全国に広めていこうと考えている先生もあちこちに出てきているのではないかと思われます。総合的な学習にしても、確かに現場の先生方の負担は想像を絶するものがありますが、うまくいっているところでは想像以上の効果が上がっているとも聞きます。

 文科省がやるべきことは、そうしたうまくいっているところのノウハウを拾い上げ、全国のあまりうまくいっていないところへ広めるお手伝いをすることではないでしょうか。それを、うまくいっていないのは教師の力量の問題がどうたらこうたらと自分たちの責任は棚に上げていつも同じことを念仏のように繰り返し、挙げ句の果てにもう止めて別のやり方をしようですか。

 教育で大事なのは制度ではなく、いかに現場の教師と子ども達のやる気を引き出すかということではないでしょうか。はっきり言って、制度なんていくらいじっても同じだと思います。いじればいじるほど悪くなるだけです。一度、制度を作ったら、その制度をうまく動かすために何十年か努力してみましょうよ。世界中にはいろんな教育制度がありますけれども、そのどれが一番良いなどと言えないことはちょっと考えればわかりそうなものです。

 それを、この20年くらいこねくり回しすぎて、めちゃくちゃにしてしまったのです。1回変えたら20年、すくなくとも10年間くらいはそのシステムを最大限に生かすような努力を続けてください。新しい教育システムが安定するまで、5年から10年かかります。小学校に入った子どもが大学を出る年齢になるまでのことを考えてみてください。その子達が在学しているうちに、学制がどんどん変わっていくなどという状況の中で落ち着いて教育や学習ができると思いますか。

 いい加減で、外圧に振り回される文科省の体質を改めて欲しいものです。
# by stochinai | 2005-02-05 00:41 | 教育 | Comments(2)
 牛海綿状脳症(BSE)から、ヒトに感染したと考えられる「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)」の日本人患者が確認されました。たとえばこれをご覧下さい。

 「厚労省によると、男性は2001年12月に発症。当時40歳代で、発症時は焦燥感などの軽い精神症状だけだったが、その後、認知症や運動機能障害などの症状が現れた。昨年半ばごろから寝たきりの状態となり、同12月に死亡した」とのことです。

 「男性は89年ごろ、英国に約1カ月の渡航歴があり、同省は英国で感染した可能性が高いとみている」とのことですが、例によって厚労省の希望的観測に過ぎないのではないかと思われます。

 産経新聞によれば、「発症者は英国が153人と圧倒的に多く、カナダなどでも英国居住歴のある人の報告がある。わずか1カ月の英国滞在で発症した例は過去にないという」ことです。

 冷静に考えてみれば、その頃1ヶ月くらい英国に滞在した日本人などは、何百人・何千人といるのではないでしょうか。もしも、英国滞在中に感染したのだとしたら、今後も同じような経歴を持った人から複数の患者さんが出ることが予想されます。

 それより、恐ろしいのはたった一ヶ月ではなくその人の生活のほとんどを過ごした日本国内での感染の可能性でしょう。そうなると、関係者を絞ることすら難しくなります。

 日本でウシの全頭検査が始まったのが2001年10月で、この男性が発症したのが同じ年の12月というあたりの、時期的符合にはとても不気味なものを感じてしまいます。

 もちろん、いたずらに不安をあおる必要はありませんが、さりとてこの男性の感染場所をイギリスと断定してしまう姿勢も、危機管理能力の甘さを示していると思います。

 ここは一つ、冷静にありとあらゆる可能性を検証していってもらいたいものです。

 しかし、アメリカからの検査なしでの牛肉輸入再開を控えたこのタイミングでの発表ですから、影響はかなり大きいでしょうね。
# by stochinai | 2005-02-04 23:09 | 生物学 | Comments(0)

一太郎と花子

 マスコミででかでかと扱われている割には、中味がどうもセコ過ぎることのような気がするのと、現時点で全く誰も影響を受けていないというところがわかりにくすぎると思うのですが、極東ブログさんの記事「一太郎訴訟、とほほ」を読むと、少しは理解できます。

 それにしても、昨日の朝刊の社説では「朝日新聞を除いて、大手紙がこぞって『一太郎訴訟』を扱っていた」というから驚きです。朝日はちょっと偉いのかな、と思っていたら今朝の社説で取り上げていました。しかも、内容は全然つまらないもので、主張したいことがあって書いたというよりは、特落ちを恐れて追随したという感じのものでした。残念!(波田陽区ふうに)
# by stochinai | 2005-02-04 14:21 | コンピューター・ネット | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai