5号館を出て

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技術屋 vs 科学者

 今回の実験では、いちおう主役というか研究対象はアフリカツメガエルのオタマジャクシなのですが、それが入っているのは小型ジェット機の中の、制御機器が詰め込まれたのラックの中にある、小さな2個の水槽です。1回のフライトで実験される60匹のオタマジャクシは、ハイテク機器の中でひとつの部品のような存在にすぎません。

 つまり、今回の実験を支えているのはハイテク機器と、それを作り、整備し、操作するたくさんのエンジニア達ということになります。我々生物学者の仕事は、さまざまに条件付けをしたオタマジャクシを健康な状態で搭乗させるところと、上空でのオタマジャクシの行動を記録したビデオの解析だけです。

 私は、こういうようなビッグプロジェクトの経験はあまりないのですが、普段おつきあいすることの少ない、工学系の方々、整備関係の方々、パイロットの方々などと一緒に仕事をしていると、いろいろな発見があって、とても良い経験をさせていただいていると思います。

 とりわけ、ジェット機の整備の様子を、場合によってはエンジニアの方に説明を受けながら、見学することができたのは、非常に勉強になっています。車輪の格納のされ方とか、ジェット機のあちこちに突き出したり、穴があいているものが何をしているのか、どういう原理なのかなどに始まり、機体の先頭にパックされている信じられないくらいたくさんの機器などを、見せて頂くだけではなく、動作原理を教わったり、そればかりではなく、それを魔術師のように整備しているエンジニアの方々の動きを見ているだけで、感動してしまいます。

 エンジニアって、かっこいいと思うだけではなく、これだけ一所懸命整備している様子を見ていると、飛行機に対する信頼性が限りなく高まるものです。

 そして、何よりもかっこいいのは、やはりパイロットの方々でした。今回は、今のところ3人のパイロットの方にお世話になっているのですが、皆さん非常に良い方ばかりで、人間的な大きさを感じさせてくれる雰囲気を持っておられます。また、その一方で、とても気さくな面も持ち合わせており、我々と冗談を言い合いながら「ここは、どういうふうに飛びましょうか」などと、まるでタクシーに乗る時のように、飛び方についてもこちらの要望を聞いてくれたりしますと、不思議な気分になるものです。

 そうした、いわば生身の「ただの人間」として我々と話していたパイロットが、飛行前にはかなり真剣に、機体のあちこちをチェックするあたりから、緊張感が高まってきます。そして、いったんコックピットにはいって、操縦桿を握ると我々が映像でしかしらない「あのパイロット」そのものになってしまうという変身ぶりも、ほんとうにカッコいいものです。

 いろいろなカルチャーギャップを楽しみながらも、実験というものはなかなか予想どおりの結果が得られるものではない現実に悩んだりもしております。

 土曜・日曜は飛行機が飛びませんので、動物たちの管理をしながら、少しリラックスしようと思っています。

(この、エントリーは21日に書きました。)
# by stochinai | 2006-10-20 23:59 | 科学一般 | Comments(2)

パラボリック・フライト

 いよいよ今日から、オタマジャクシを微小重力におく飛行実験の開始です。こちらは飛行を前に、緊張しているアフリカツメガエルのオタマジャクシです。
パラボリック・フライト_c0025115_23434311.jpg

 ジェット機で放物線を描くように飛行させるパラボリックフライトを行うと、短時間(今回は20秒間)ではありますが無重量状態(正確には微小重力環境)を作り出すことができます。

 アフリカツメガエルの幼生(オタマジャクシ)は「エラ」も使うのですが、カエルと同じような肺を持っていて、水面に口を出して空気を取り込むことで正常な呼吸ができます。逆に言うと、水面で息をすることができないと、十分に酸素を取り込むことができないのです。地球上で水中にいるオタマジャクシが水面を知るのは、重力と反対側の方向にはたらく浮力によると考えられています。ということは無重力環境下にいると、浮力もなくなりますので、浮力を頼りに水面を発見することはできなくなります。

 いままで、宇宙空間に送られたアフリカツメガエルの幼生は、うまく空気を吸い込むことができないために、成長障害が起こることが報告されています。

 我々の当面の目標は、たとえ無重力空間でもオタマジャクシが正常に空気を吸うことができ、アフリカツメガエルが宇宙でも生活できるようにしてやることです。アフリカツメガエルは、地球上では発生生物学研究のアイドルといわれるくらい広く実験に使われていますので、それを使って宇宙で実験ができるようになる意義は、とても大きいのです。

 そのために、我々は彼らが息を吸いやすい水面を作ってやることと、水面の位置を教えてやることを目標に実験を行っています。

 今回、微小環境重力を作るパラボリックフライトしてくれたのは、DASのJA30DAという小型ジェット機です。

 初回の飛行ですから、必ずしも大成功というわけでもありませんでしたが、オタマジャクシ達はがんばってくれました。15回のパラボリックフライトの間に、水面をどうやって見つけるのかということを我々に教えてくれる行動を見せてくれました。

 こちらが、フライト後のオタマジャクシ達です。
パラボリック・フライト_c0025115_034396.jpg
 ほっとしたようにリラックスしています。

 明日は、別のグループのオタマジャクシに飛んでもらいます。
# by stochinai | 2006-10-19 23:59 | 生物学 | Comments(8)

宇宙生物学

 またまた出張であります。今日は、ANAのエアバスA300320(A321-131)で、席が羽の上だったので、機体番号も確認できました。
宇宙生物学_c0025115_1451664.jpg
 例によって、写真集もあります。

 前に機体番号の話をした時に、過去の自己記録も調べることができるというコメントをいただいたので調べてみましたら、なんと!ありました。

 昨年の9月に、場所は私が降りた中部国際空港セントレア上空で、大分から羽田へ向かっていたこの機の空調システムが不調になり、乗客用エアマスクが降りてくるという騒ぎになったようですが、予定どおり羽田まで飛行を続けたという「インシデント」です。そう言えばニュースにもなったような気がします。それにしても、とりあえず何事もなかった「事故」についても、これだけの報告書を作るという姿勢は、評価できると思いました。

 さて、セントレアに降りたのですが行き先は、名古屋ではなく小牧にある名古屋空港です。不思議なことにセントレアから名古屋空港行きのバスがあります。せっかくの空港なのですが、札幌千歳からはもちろん東京羽田からすら空路で行くことができないのです。
宇宙生物学_c0025115_1535146.jpg

宇宙生物学_c0025115_1543293.jpg

 陸路でようやくたどりついた愛知県営名古屋空港です。
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 明日からここにある、ダイアモンドエアサービスという会社で、アフリカツメガエルのオタマジャクシを、ジェット機のパラボリックフライトによって一時的に微小重力(無重力近似)化において実験をします。

 国家秘密がたくさんあるので写真は無理ですが、飛行場の飛行機格納庫で作業をしていると、プロジェクトXを演じている気分です。

 その時、最後のオタマジャクシが・・・・・・・した。
# by stochinai | 2006-10-18 23:36 | 生物学 | Comments(7)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai