5号館を出て

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 3月16日に1000トンもの生乳を捨てるのはいかにももったいないというエントリーを立て、たくさんのトラックバックやコメントをいただきました。

 その中で海外援助に使うことはできないのかという意見も出て、賛否いろいろありましたが今朝の閣議後の会見で、中川昭一農水相が「世界中で栄養不足、飢餓で困っている人たちに緊急かつ例外的に援助できないか検討する」と述べ、生乳の生産過剰分を海外への緊急援助に活用する方針を明らかにしたというニュースが飛び込んできました。
 中川農水相は生乳の廃棄処理について「大変もったいない。(生産者にも)気の毒な状況だ」と指摘。この日の閣僚懇談会で小泉純一郎首相からも有効活用策の検討を指示されたことを明らかにした。保存の利く脱脂粉乳やロングライフ牛乳などの形での援助が検討される見通しで、被援助国や物資の量などは早急に財務、外務両省と協議して決めるとしている。

 経済的な面から見ると、多少の効率の悪さがあるのかもしれませんが、この中川さんの意見は素人っぽいとしても、一般市民の目線と同じ高さを感じさせるもので好感が持てました。

 今朝のニュースでは、牛乳は今過剰になっているものの実は2005年度の生乳生産量は、当初予定を下回っていることが明らかになったと報道されていました。春から夏には前年度を下回る生産量だったものが、秋になって急激に増えてきたためそこでの生産調整努力にもかかわらず余ってしまったということのようです。

 予定量よりも少ないのに余ってしまったということは、人々が牛乳及び乳製品を買わなくなったということなのでしょうから、それに応ずるように長い目で生産管理を考えなければならないこという状況は変わりません。

 あとは、日本人の生活の中に定着してきたチーズなどについて、良質で安価なものをたくさん国内生産できる体制も作って、安心して酪農できる環境も作っていくのが北海道の責任だとも思います。

 牛乳に関しても、生産者と消費者がつながって、協力体制がとれるといいですね。
# by stochinai | 2006-04-04 21:21 | つぶやき | Comments(3)

OpenOffice.org 2.0.2日本語版

 あちこちの国立大学で、コンピューターソフトウェアの違法コピー問題が持ち上がり、我が大学でも先日ソフトウェアのインストール状況の調査がありました。

 最近のマイクロソフトの製品はインストールのチェックが厳しくなっていますので、オフィスなども複数台のコンピューターにインストールすることはできなくなっておりますので、我が研究室でも公費で購入したマシンには正規のオフィスがインストールされています。

 しかし、学生の身ではコンピューターを買うことまではできても、高価なソフトを購入することはなかなか難しいのが現実だと思います。昔に比べると値段が一桁下がってきたとは言え、それぞれが数万円のマイクロソフト・オフィスを買ってインストールということは現実的にはなかなか難しいようです。

 それを克服するのはサイトライセンス制度かオープンソースでフリーに配布されているマイクロソフトオフィス互換のソフトウェアだと思います。サイトライセンス制度はその利用が面倒なこともあってか意外に広まっておりませんが、OpenOfficeというソフトは最近になって精力的にバージョンアップを繰り返しており、だんだんと「使える」ものに仕上がってきているように思われます。

 そんな中、「OpenOffice.orgコミュニティは4月3日、「OpenOffice.org 2.0.2」日本語版の配布を開始した」というニュースが飛び込んできました。

 取りあえずダウンロードして使ってみましたが、昔試したときのような「がっかり」ということはなく、少なくともすでにあるファイル(マイクロソフト・ワード、エクセル、パワーポイント)の閲覧に関しては問題はほとんど感じられませんでした。

 編集に関しては、まだほとんどさわっていないのでコメントは控えておきます。

 ただ、こういうソフトはいざ使い始めてみてから、やっぱりダメだったということになると非常にダメージが大きいですから、多くの人は自分が今使っているソフトがたとえ違法コピーと知っていてもなかなか乗り換える勇気がわいてこないかもしれません。

 しかし違法は違法なのですから、正規の製品を手に入れるかフリーソフトに乗り換えるか以外に選択の余地はないのです。

 今回のOpenOfficeのバージョンアップでは、大きな特徴として自分のPCのハードディスクドライブにインストールせずに、CD-ROMやメモリースティックに保存されたアップリケーションから立ち上げることが可能になっています。これだとダメだとわかった時にすぐに元に戻れ、乗り換え時のリスクを最小限に抑えて試すことができますので、違法オフィスをお使いの人は是非とも試していただきたいところです。

 たくさんの人が試して、その感想をOpenOffice.org日本ユーザー会などに送るとさらにソフトが改良されて使いやすくなりますので、あるところからは急速に良いものになっていくことが期待されます。

 文科省もただ単に、教職員や学生に違法コピーをやめましょうと訴えるだけではなく、積極的にこうしたフリーソフトを支援していってはどうでしょう。そうすることで、現在の違法状態の解消ができるだけではなく、ソフトユーザーの教育という意味でも大きな意義があると思います。

 特定の企業を儲けさせるわけではない、こうしたフリーソフトの支援は国が行う仕事としてもきわめて適切なことだと思いますので、是非ともご検討をお願いいたします。
# by stochinai | 2006-04-03 22:21 | コンピューター・ネット | Comments(3)
 私達が実験で使っているアフリカツメガエルは、オタマジャクシの時には脳のかなりの部分を除去しても成体になるまでには完全に再生することができます。しかし、カエルになってしまうと同じ手術をした脳の傷口の修復すらままなりません。

 脊椎動物界を進化的に眺めてみると、魚類は非常に再生力が強く、脳や心臓も再生すると言われています。もちろん、脳や心臓の一部を除去しても死なない限り、です。魚類から進化した両生類では、イモリやサンショウウオなど大人になっても尾のある有尾両生類は、幼生の時だけではなく成体になってからも脳を再生することができます。カエルなど成体になると尾のなくなる無尾両生類は、上に書いたように幼生(オタマジャクシ)の時には脳でも再生することができますが、成体になると全然ダメです。さらに進化した爬虫類とそれが進化した鳥類や、爬虫類とともに両生類から進化したと考えられる哺乳類では、脳の大きな領域が失われた場合に再生が見られることはありません。

#進化初期に現れた哺乳類は、爬虫類型哺乳類とも言われることもありますが、最近では爬虫類から哺乳類が進化したというよりは、同時並行的に進化してきたという考え方が強くなってきています。

 カエルは進化的にみると、魚類・有尾両生類と爬虫類・哺乳類の間に位置していると考えられます。また発生学的にみるとオタマジャクシが発生を続けてカエルになります。

 上に書いた脳の再生に関して見てみると、再生する動物群から再生しない動物群へと進化するあたりに位置するカエルが、まだ幼いオタマジャクシの時にだけ大きな再生力を示すという事実はとても示唆的だと思います。

 つまり、進化の過程でみられたのと同じように、発生過程で再生能力を失うのです。

 これは、個体発生が系統発生(進化)を繰り返しているということを意味しているのでしょうか。

 そのことの真偽はさておき、ひょっとするとオタマジャクシがカエルになるとどうして脳を再生することができなくなるかが明らかになれば、本来は脳を再生しない爬虫類や哺乳類の脳を再生させることができるようになる、あるいはそれらの動物でどうして脳が再生できなくなったのかを知ることができるかもしれない、というのが我々の研究のもーティべーションのひとつです。

 そんなことをまとめて書いてみると、ひょっとすると再生医学を研究しておられるお医者さんのお役に立てるかも知れないということで、「再生医療の基礎シリーズ 1 -生医学と工学の接点- 再生医療のための発生生物学」という本のなかで、「脳形成と再生」という章を書かせていただきました。今は弁理士を目指しながら、特許事務所でとして活躍中のY野君の力作です。機会があったら手にとっていただけると幸いです。
目次より

1. プラナリアの再生
2. コオロギの脚の再生メカニズム
3. 組織再構築過程としての無尾両生類の変態
4. 両生類の四肢の再生
5. 両生類の器官形成
6. 脳形成と再生
7. ニワトリの消化器官形成
8. 脊椎動物の眼の形成と再生
9. マウス神経の発生と再生
10. 腎臓形成のメカニズムと再生への挑戦
11. 消化器領域における幹細胞分離と医療応用

# by stochinai | 2006-04-03 18:34 | 生物学 | Comments(11)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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