5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
 さて、いよいよ明日は2次入学試験の前期日程の日です。

 受験生にとっては、オリンピックどころではないでしょうが、今朝の女子フィギュアは予想通りの結果とは言え、くだらないニュースの多い今の日本にほっとする話題を提供してくれました。

 それにしても、予想通りの結果になったというところは、やはり彼女らの実力がマスコミが煽っていた他の競技のものとは一味違うことを示していたと思います。特に、荒川靜香さんという人の度胸はすごいと思いました。もちろん、たゆまぬ練習に裏付けられた自信があってのことだとは思いますが、大舞台であそこまでクールになれるのは、練習と慣れだけでは片づけられない天性の素質のようなものもあったと思われます。

 私は、ウォッチしていたわけではないのですが、テレビで何度も何度も流される最近の彼女を見ていると、彼女のスケートはフィギュアとはいっても、いわゆるダンスのような美を中心に成り立つものではなく、徹底して肉体を鍛え上げることによって達成させる完全なアスレチックであると感じさせられていました。氷の上だけではなく、陸(?)の上での筋トレや柔軟体操を一所懸命やっている姿は、まさに体育会系の発汗トレーニングそのものでした。

 そのようにして仕上げられていった彼女のスケートは、スピードを競いあう競技スケートと同じように、相手が目の前にいようがいまいが「客観的に」自分のレベルを判断できるものになっていたのではないでしょうか。

 スピードスケートなどのように、タイムを競いあう競技であるならば、たった一人で練習していたとしても、その時間によって自分が世界で何位くらいにいるかは判断できます。おそらく、彼女は練習をする中で、その実感を感じていたのではないでしょうか。それが、彼女に落ち着きを与えた要因のひとつだと思います。

 単純に順位だけを問題にするのであれば、当日の相手の出来不出来を見るまでは、心落ち着かないでしょうし、見たら見たでまた心が揺れ動くのではないでしょうか。順位ばかりを気にしていては自分を磨くことなどできないことは容易に想像がつきます。

 話を受験の戻します。少子化の影響と大学の増設で、大学入学はどんどん易しくなってきています。良く学生の知的レベルが下がっていることが問題になりますが、合否ギリギリのラインで合格する人は、場合によっては不合格になってもおかしくありません。そこは、順位だけが人の運命を支配する領域です。

 一方、合否ラインのはるか上、上位の成績で合格する人は、どんなことがあろうと合格は動かない領域にいます。そういう人は、落ち着いて入試に臨むことができるでしょう。つまり、荒川靜香さんと同じような心境になれるのではないでしょうか。

 もちろん、どんなに良い成績で合格したとしても金メダルはもらえませんが、それまでに鍛えてきた自分の実力を出すことができたら、限りない満足感が得られるはずです。

 一方、準備が足りないと思っている人も、ひょっとしたら競争相手の不調により合格できるかもしれません。

 いずれの場合も自分の実力が出せる精神と肉体の状態を維持していなければ、自分が獲得可能な最高の結果は望めません。逆に、変な期待をして実力以上の結果を望んだりしなければ、結果はどうなったとしても何も悔やむことはありません。まだまだこれから何度でもやり直しができますし、不合格になるということは合格していたら決して経験できなかった道を与えられることでもあるのです。

 今日の荒川靜香さんを見習って、クールに美しく試験に臨んでください。

 ファイト!
# by stochinai | 2006-02-24 21:37 | 大学・高等教育 | Comments(6)
 今日オンラインで公開されたnatureにおもしろい論文が載っています。

 我々が使っている動物進化の教科書には、ナメクジウオがヤツメウナギなどの円口類の祖先であろうと書いてあります。また、カンブリアにはピカイアというナメクジウオに良く似た動物がいたようで、それが脊椎動物の祖先ではないかと書かれています。ナメクジウオが円口類になって、それがサメ・エイなどの軟骨魚類へと進化したというお話は、かなり広範に信じられています。(私も信じていました。)

 さらに元をたどると、ウニやヒトデなどの棘皮動物がもっとも祖先型に近く、その仲間にエラが発達してギボシムシのような半索動物が進化し、それに脊髄と脊索ができてホヤになり、さらに分節化した筋肉(体節)ができてナメクジウオのような動物になったと、多くの本に書かれています。

 私も調子に乗って、講義ではナメクジウオに脳(目)と吸盤のような口が進化するとヤツメウナギが簡単にできあがるなどと話したりしています。

 DNAの塩基配列を比較するという最近の研究によって、実は棘皮動物とギボシムシはホヤ・ナメクジウオ・脊椎動物とはちょっと違うグループに分けられると言われるようにはなりましたが、基本的な進化ルートはそんなに変わらないと思われてきたのです。

 ところが、nature の news and views に、以下のような「ナメクジウオにご注意」という記事が載りました。
Evolution: Careful with that amphioxus
The textbook tale of vertebrate origins is brought into question by phylogenetic analyses of new genomic data. But the amphioxus, long viewed as a precursor to fish, remains a central character in events.
Henry Gee
Nature 439, 923-924 (23 February 2006)

 新しいデータによると、実は棘皮動物とナメクジウオが近いグループで、ホヤと脊椎動物がもう一つのグループに入り、この二つのグループは進化のかなり初期に分かれていたのではないかというのです。

 この論文の原典も同じ号のnatureに載っています。
Tunicates and not cephalochordates are the closest living relatives of vertebrates
Frédéric Delsuc, Henner Brinkmann, Daniel Chourrout and Hervé Philippe
Nature 439, 965-968 (23 February 2006)

 「ナメクジウオではなくてホヤのほうが脊椎動物に近い」というタイトルの論文です。著者らはあまり研究されてこなかったオタマボヤの1種Oikopleura dioicaで146個もの遺伝子DNAの塩基配列を調べ、それを他の動物と比較してみたところ、オタマボヤは他のホヤ類ととともに脊椎動物とグループを作り、それまで脊椎動物に近いと言われていたナメクジウオと棘皮動物(ウニ・ヒトデ)が(ホヤ+脊椎動物)と分かれたところにグループを作るという系統樹ができあがってしまったということです。

 実は、ホヤと脊椎動物がOlfactoreというグループの動物にまとめられるという説もあるのだそうで、今回の論文はその説の強い証拠となるということでしょうか。形から見ると、オタマボヤはオタマジャクシのような形をしていますし、大人になると岩に付着して生活するホヤも幼生の時にはオタマジャクシ形をして泳ぎ回りますので、それが脊椎動物と近縁だと言ってもそれほど違和感はありません。

 ただし、ナメクジウオはまさにサカナの形をしていますので、そういう意味ではどうしても脊椎動物との類縁関係を捨て去ることはできません。

 この論文で比較されている円口類を含む脊椎動物は8種類です。ホヤも4種類あります。それに対して、棘皮動物はウニが1種類、ナメクジウオも1種類ですので、比較するという点からみるとどうしても片手落ちの感はぬぐえません。

 というわけで、なかなかおもしろい仮説だと思うのですが、今後よりたくさんの種類のナメクジウオと棘皮動物(ウニ・ヒトデ)の遺伝子を解析した上で、同じようにたくさんの遺伝子を同時に比較するという研究がどうしても欲しいというのが正直な感想です。

 著者達もそのことはわかっているようで、論文の最後は次のような決まり文句で結ばれております。
The comparative analysis of available tunicate and vertebrate genomes with the upcoming amphioxus and sea-urchin genome sequences will be particularly valuable for understanding the evolution of new gene systems and structures involved in early vertebrate development.

 どんな論文を書いた時にも使える締めくくりですので、学生のみなさんはメモしておきましょう(^^;)。
# by stochinai | 2006-02-23 22:15 | 生物学 | Comments(4)

迷惑メールの配送制御

 あまりのスパムメールの多さに、北海道大学のメールサーバーを管理する情報基盤センターがついに根本での制御に乗り出すとのことです。

 毎日、北大に出入りするメールが約16万通だそうですが、そのうちの20%くらいがスパムメールなのだそうですが、実感と一致する値です。

 私も自分のメーラーで迷惑メールの振り分けをやっていますが、アドレスについてそれが信頼できるかどうかということと、ヘッダーおよび本文に迷惑ワードが含まれているかどうかといった原始的な判断しかできません。

 アドレスについては、毎日のように新しいアドレスが作られており、信頼できないアドレスから複数回送られて来るという間抜けなスパムしか振り分けられません。

 また、キーワードについてはうかつに登録してあるものが部分一致で認識されたり、「変態」が登録されていたりすると「カエルの変態」がはじかれたり、「生殖器の異常」が「生殖器」ではじかれたりするような可能性がありますので、生物学用語には難しいものがあります。ましてや英語だともっと微妙なことになります。

 というわけで、アドレスやキーワードによるチェックはきわめて不完全ですので、結局せっかく振り分けられた迷惑メールフォルダーをチェックするという間抜けなことをやっている毎日です。

 一方、大学でメールを使っている人のうち、かなり多くの人がメールの振り分けをすることすらできないというレベルのリテラシーだと思いますので、不満がたまっていたことは想像に難くありません。ついにメールサーバーを管理する専門家によって、ヘッダー解析に基づいた受信(および発信)制限が行われることになったというわけだと思います。

 ウイルスメールに関しては本文の「検閲」をやっている大学のサーバーですが、スパムに関しては本文はチェックしないとのことです。チェックの方法としては、以下のルールが示されています。
・メール発信元がDNS(Domain Name Server)に登録されていない場合
・迷惑メール発信元としての件数が多い組織(主に海外のプロバイダー)からの場合
・学外からの発信でありながら、学内からの発信を装っている場合
・学内からの発信でありながら、学外からの発信を装っている場合
・必須である設定を行わず、初期設定のまま運用しているメールサーバを経由する場合
・その他、メールヘッダーに特徴を有する場合

 最初と最後の判断がちょっと微妙かもしれませんね。個人のコンピューターをsmtpサーバーにしている方などのメールがはじかれてしまうかもしれません。というわけで「本来届くはずのメールが届かない、などの不具合がありましたら、hines@iic.hokudai.ac.jpまでお問い合わせ下さい」との注意があります。実施は3月1日からですので、北大に宛てたメールがどうも届いていないようだということがありましたら、調べてみてください。明らかなスパムメールは消去するとのことですが、「迷惑メールと判断したメールについて配送を行わずに保管」すると言っていますので、ユニーク(1通だけ)のメールでしたら回復できることができる可能性はあると思います。

 さらに、以下のドメインとIPアドレスから送られてきたものは配送しないそうです。ブラック・リストですので、ご参考までに曝しておくことにします。

apol.com.tw
irvnca.pacbell.net
irvnca.sbcglobal.net
mailyes.net
rev.dyxnet.com
spamsrv1.hn.org

58.180.*.*
61.56.*.*
61.232.*.*
61.233.*.*
61.236.*.*
125.187.*.*
202.171.*.*
218.81.*.*
218.233.*.*
211.94.*.*
221.212.*.*
222.161.*.*
222.171.*.*

 でも、いくらコストが安いからといってあの膨大なスパムメールで利益を得ている人(業者)がいるとはとても信じられません。まさか、人が迷惑しているのを見て楽しんでいるというわけでもないのでしょうから、どうしてなくならないのか不思議でなりません。

 それとも、思わず反応してしまう人がいるということなのでしょうか?

【追記】
 sapporokoyaさんが、この件に関連して解説記事を書いてくださいました。是非とも、参照してください。
# by stochinai | 2006-02-22 22:24 | コンピューター・ネット | Comments(9)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai