5号館を出て

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お客さん

 今日は、カリフォルニアのアーバイン(Irvine)からお客さんが来たので、歓迎会をしています。

 お客さんは、日本人なのですが東北大を出て、広島でポスドク(博士を持っている非常勤研究員)をした後、カリフォルニアでポスドクをやっている人です。

 東北大での大学院生時代に、カエルの再生研究をやっていたので知り合いになった人なのですが、アメリカで研究者として働くには時々国外に出て(日本に戻って)、ビザの更新をしなければならないということで、東京のアメリカ大使館に出頭するついでに北海道にも寄ってくれたというわけです。

 セミナーをお願いして、主に今やっている再生研究の話をしてもらいました。ついでに、つい最近カリフォルニアで住民投票の結果、賛成多数で成立した「再生研究推進」の話もしてくれました。シュワルツネガー州知事の下、先頃亡くなったスーパーマン・クリストファー・リーブや、パーキンソン病で苦しむマイケル・J・フォックスの話などが出てくると、「さすがアメリカ」という気がします。 

 アメリカには日本から行っているポスドクの人がたくさんいるのですが、そういう人たちが集まると、必ず最後はどうやって日本に帰ったら良いかの話になるそうです。

 日本政府の大学院生・ポスドク大量生産政策の結果、優秀なポスドクの人がたくさん海外に出ているのですが、向こうでたくさんの業績を上げたとしても、なかなか日本で定職に就くことのできない人が多いという現状があります。

 非常に優秀な彼ら・彼女らをこのまま、外国流民にしてしまっては国家的大損害です。せっかく育った彼らをなんとかして日本に呼び戻して、きちんとしたポジションを与えることは、日本の将来にとっても非常に重要なことであると思いますので、政府にはそこのところをしっかりと把握した上で、長い目で見たしっかりとした政策の立案をお願いしたいと思います。

 内閣や国会議員の継続年数以内の政策しか出てこないような、今の政策立案システムでは国の将来を担うであろう、若手研究者の未来を切り開くことはとても難しいと思います。

 そこで、政府だけにまかせておかず、全国の大学関係者においても、自分たちが育てた、最良の頭脳である彼らを日本に呼び戻し、次世代の研究および研究者養成に携わるべきポジションを与えるよう声を上げて頂きたいと思います。

 微力ながら、私も頑張りたいと思います。

 逆に、そのような境遇に置かれたポスドクの皆さんにも、声を挙げて頂きたいと思います。

 黙っていても、国は動いてくれないものです。一緒に頑張りましょう。
# by stochinai | 2004-11-17 17:43 | 生物学 | Comments(0)

もう殺し合いはやめよう

 さすがに準備不足で、ゼミは満足のいくものにはなりませんでした。朝から集まって頂いた皆さんには、改めておわびを申し上げます。論文は良かったんですけど、紹介者がダメでした。すみません。

 さて、あと数日でファッルージャの戦いも終わると、アメリカは発表しているようです。個人的にはアメリカが負けて痛い目を見るべきだと思わなくもないのですが、ともかく一日も早く銃火が収まって欲しいので、そんなことは言っていられません。

 おそらく、数千人の兵士と市民が殺されたことと思います。すぐにやめろと言っても、今のアメリカ軍にそのようなことができないことはわかります。ともかく、アメリカが勝とうがどうしようがかまいません。一刻も早く戦闘が終結して欲しいと思います。

 そんな中、またしても嫌なニュースが飛び込んできました。非武装・無抵抗のイラク人負傷者、米兵が射殺です。戦場ですから、そのようなことは起こり得ることだと思います。そういう意味では、どうしてこれが大ニュースで、戦闘の中で殺されたたくさんの子ども達のことはニュースにならないのでしょう。

 たまたまカメラがとらえてしまったから、「残酷」だというのでしょうか。傷を負って動けない人間を射殺するのが残酷で、元気な兵士を何十人も撃ち殺すのは残酷ではないということなのでしょうか。

 抵抗しない人間を殺すと犯罪で、抵抗している人間はひとりでも多く殺すと勲章だという戦場の「ルール」を我々が受け入れなければならない義務はありません。。

 殺人に、良い殺人と悪い殺人があるはずがありません。どちらも犯罪です。また、無抵抗の人間を殺したのが犯罪だという論理は、現場の兵士には通じないと思います。その兵士だって、ついさっき隣にいた戦友が銃弾に倒れたことが原因で、怒りに狂っていたということも考えられます。それを犯罪者呼ばわりするアメリカ軍の偽善的な態度も、非常に不快です。「米軍は16日、戦争犯罪の疑いがあるとして捜査を始めた」などと書くマスコミも不快です。

 ルールのない無差別殺戮が行われている戦場に兵士を送り込んで、人道的な殺人をしろなどとは、なんたる命令でしょう。人道的な殺人とは、どんなことを指すのですか。

 先日の、捕虜収容所での虐待事件も起こるべくして起こったものだと思います。虐待をした兵士が悪いといって「裁判」にかけたようですが、精神がおかしくなるようなところに送り込まれた人間が、異常な行動をとったからと言って裁判にかけると言っている人間の方がよほど狂っていると思います。

 若くて(おそらく高等教育などはそれほど受けていないであろうと思われる)貧乏な兵士を大量に送り込んで、その人間達に老練な倫理学者のような行動を取れ、と言っていることの喜劇(悲劇)性がわからないとしたら、やはりブッシュ一派とそれを支持している各国の首脳は、ヒトラーや金正日となんら変わらない血に飢えた狂人と断言せざるを得ません。

 そして同じ思想を持つ連中が、かつて戦場で起こった虐殺は、聖戦であったし、正当防衛であったし、あなた方がいうほどたくさんの人を殺したわけではないと、戦争のあと何十年もたってから言うものなのだという歴史の事実が目の前で行われている現実を見ていると、ほんとうにつらくなります。

 主義主張はいくらでもほざいてください。ともかく、殺人は醜悪で不快です。すぐにやめてください。

 高遠さんも言っているように、イラクで人質を取っては殺す外国から集まってきている「義勇兵」も、勝手に人の国の体制を「民主化」しようとして虐殺を繰り返しているアメリカ軍も、どっちも人殺しはやめてください。

 あなた達は、心底バカです。
# by stochinai | 2004-11-16 17:43 | つぶやき | Comments(0)

自分で起こす突然変異

 気温はどんどん下がってきています。おそらく、真夜中の外気温は1℃か2℃だと思います。時折、空から降ってきているものは、雨ではなく雪です。風もかなり強くなってきました。

 今日の講義の後は、明日のゼミで紹介する論文を読んでいました。

 9月頃に出た論文なのですが、ウイルスのおもしろい生き方についての研究です。

 百日咳のバクテリア(細菌)に感染して、内部で増殖し百日咳を破壊してしまう、正義の味方(?)ウイルスの話です。

 百日咳は免疫ができやすく、乳幼児期に一度かかるか、そうでなくてもワクチンが非常に効果的に効くので、それほど問題になっていることもないのですが、ヒトに悪さをする細菌を殺してくれるウイルスは、納税者にも説明しやすい研究対象かもしれません。研究が進んでいるようです。

 そのウイルスが、百日咳菌に感染する時には、細菌の表面にある毒素に結合して侵入します。一方、百日咳菌はときどき毒素を作らないタイプに変異してしまうので、その時には毒素を介したウイルスの感染も起こらなくなると思われていました。

 ところが敵もさるもので、毒素を作らなくなった百日咳菌に感染できるようにウイルスも変異することがわかりました。

 それだけなら、自然界に良くある進化競争のひとつとして片づけられるのですが、そのウイルスの変異の仕方がなんと驚くことに、自分で自分の遺伝子を変異させるカセット遺伝子を用意していて、時に応じてそのカセットから遺伝子を呼び出して、それまで使っていた遺伝子の部品を交換して変化させているということがわかりました。

 毒のない百日咳菌に感染できるようになったウイルスは毒のある菌に感染する力はなくなってしまうのですが、百日咳菌が毒性を回復すると、また例のカセット遺伝子を呼び出して自分の遺伝子を組み換えて、毒性菌に感染できるように復帰もできるというのです。

 現代の進化論は、突然変異はランダムにしか起こらず、ランダムな突然変異の中から適応的な遺伝子を持った個体が自然の力で選択させることで進化が起こると説明しています。

 ところが、ウイルスの研究から、特定の場所に特定の突然変異を引き起こすことがあり得ることが示されるようになってきました。つまり、生物に都合の良い突然変異を起こしうるということです。

 しかも、今回ウイルスで発見された突然変異を引き起こすカセット遺伝子が、ウイルスのみならず、もう少し高等なシアノバクテリアという光合成細菌にあることもわかってきました。

 長い間不思議に思われてきた、合目的な進化というものを期待させてくれる発見なのかも知れません。

 生物というものは、本当に底知れない存在です。
# by stochinai | 2004-11-15 17:45 | 生物学 | Comments(3)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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